パリと香り
パリ界隈を散策すると、辺りで鼻をくすぐる匂いがします。鼻のシラノの国、フランスでは、シラノを知らなくても様々な香りを楽しめます。
パリではすでに朝早くから、美味しい匂いがあちらこちらでします。焼きたてのパン、クロワッサンにコーヒー。都会に生きる人々を仕事へ駆り立てる匂いです。パリの大通りでは、マルシェの屋台からたくさんの匂いが立ち込めます。
パリが大切にするのは、女性が通ったあとの、想像をかき立てる香水の残り香です。高級ブティックの扉の向こうから微かに匂う、グレーのスーツに身を包んだ品のある女性の笑みに似合う香り。
パリで誰もが永遠だと思う場所に行けば、信者より旅行者が多く訪れる数々の宗教建築から、香のかおりがしてきます。メッカと言えば、首都パリで最も名高いメッカはいずれもガストロノミーの星付きです。調理場からは、フランスのブルジョワ料理の強力な香りが漂います。
パリの各劇場、歌姫たちから発せられるのは、ビストロやカフェのテラス席、あるいは伝説となったブラッスリーで香るワインのブーケ(芳香)と全く同じ、強い香水の匂いです。
そしてこの匂いがまた、美しいホールの花の香りや庭園での子供のおやつの匂いと混じり合います。甘美な香りと言えば、新しくできたパティスリー、軽食のとれるスペースから漂うチョコレートやスパイスの香り。もっと無機的な匂いは、ジョルジュ・オスマンが整備した建物の正面口や、超高級ホテルの凹んだスペース、それに素敵なホテルの凝った内装からも。そして相変わらず公立学校のベンチからは木の香りがし、近隣では明らかに無分別なお酒のにおいがします。
ここは世界で最も人が訪れる有名な街にあり、ペール・ラシェーズ墓地をより広い首都の緑地にする死後のことなど人は決して気に掛けないでしょう。パリは生きることを楽しむ街です。ずっと昔から。唯一、もう匂わなくなったもの、それは美術館の埃のにおいです。美術館はすべて、かなりの費用をかけて改装されました。
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